混合型高脂血症患者に対するフェノフィブラートとエゼチミブ(ezetimibe)の併用は安全かつ有効な治療か?
原論文
McKenney JM et al. (2006) Safety and efficacy of long-term co-administration of fenofibrate and ezetimibe in patients with mixed hyperlipidemia. J Am Coll Cardiol 47: 1584-1587
PRACTICE POINT(診療のポイント)
スタチンは異脂肪血症管理の第一選択薬であるべきだが、スタチンに不耐性を示す患者に対しては、エゼチミブとフェノフィブラートの併用が現在認可されている代替治療である。
SYNOPSIS(概要)
BACKGROUND(背景)
肥満とメタボリックシンドロームの蔓延により、ここ数十年で混合型高脂血症の有病率がかなり上昇している。エゼチミブ(ezetimibe)はLDLコレステロールをある程度減少させるコレステロール吸収阻害薬であり、一方、フェノフィブラートはトリグリセリド値やHDLコレステロール値に大きな影響を及ぼすフィブリン酸誘導体である。したがって、エゼチミブとフェノフィブラートの併用は、混合型高脂血症、とくにスタチン不耐性の患者に対する有効な治療となり得る。
OBJECTIVES(目的)
フェノフィブラート+エゼチミブの長期併用が、混合型高脂血症患者において安全かつ有効な治療か否かを確認すること。
DESIGN AND INTERVENTION(デザインと介入)
患者をまず、エゼチミブ10mg、フェノフィブラート160mg、エゼチミブ10mg+フェノフィブラート160mg、プラセボのいずれかを投与する群に無作為に割り付け、12週間の二重盲検試験を実施した。安全と判断された場合、次にさらに48週間の延長期(二重盲検下)に入った。最初にフェノフィブラートまたはフェノフィブラート+エゼチミブの投与を受けていた患者はそれぞれの投与を継続したが、エゼチミブ単独投与を受けていた患者はエゼチミブ+フェノフィブラート投与に、プラセボを投与されていた患者はフェノフィブラート投与に切り替えた。すなわち、48週間の延長期では、全患者にフェノフィブラートまたはフェノフィブラート+エゼチミブを投与した。
OUTCOME MEASURES(評価項目)
主要評価項目は、LDLコレステロール値の試験開始時から試験終了時までの変化とした。
RESULTS(結果)
最初の12週間の試験を完了した患者587例中576例が48週間の延長期に進み、これを完了した。延長期では、340例がフェノフィブラート+エゼチミブ併用投与、236例がフェノフィブラート単独投与を受けた。治療中止率はフェノフィブラート単独投与群(63.1%)がフェノフィブラート+エゼチミブ併用投与群(32.4%)よりも相対的に高く、これは主に治療が無効(12週目以降のリスク特異的LDLコレステロールの目標値よりも高いLDLコレステロール値>15mg/dL[0.39mmol/L]と定義)であることが原因であった。フェノフィブラート単独投与に比し、エゼチミブ+フェノフィブラート併用投与はLDLコレステロール(22%対8.6%、P<0.001)、トリグリセリド(46%対41.8%、P=0.002)、非HDLコレステロール(31.6%対19.4%、P<0.001)、アポリポ蛋白B(25%対16.2%、P<0.001)の各濃度を大幅に低下させた。HDLコレステロール値の上昇程度は、併用投与群のほうがフェノフィブラート単独投与群よりもやや高かったが、有意差は認められなかった(20.9%対17.8%、P=0.2)。エゼチミブとフェノフィブラートの併用投与は、フェノフィブラート単独投与以上に高感度CRP(C反応性蛋白)を有意に低下させなかった(-25.3%対-21.1%、P=0.46)。投与に関連した有害作用による治療中止率は、併用投与群とフェノフィブラート単独投与群で類似していた(3.8%対5.5%)。肝酵素上昇率(アラニンアミノトランスフェラーゼ値またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ値が連続して上限値の3倍以上)も両群でほぼ同等であった(併用投与群1.7%対フェノフィブラート単独投与群1.2%)。
CONCLUSION(結論)
エゼチミブとフェノフィブラートの併用は、LDLコレステロール値を有意に低下させ、トリグリセリド値およびHDLコレステロール値に有益な効果をもたらした。この併用は概ね忍容性が良好で、許容できる長期安全性を示した。
KEYWORDS(キーワード)
COMMENTARY(解説)
Michael H Davidson
まったく新しいコレステロール吸収阻害薬であるエゼチミブは、LDLコレステロール低下薬として広く認識され、スタチン系薬剤と併用されることが非常に多い。スタチン単独投与よりもさらに18%LDLコレステロールを低下させることから、エゼチミブ投与はスタチン系薬剤の3倍用量に匹敵するLDLコレステロール低下作用をもち、高リスク患者において全米コレステロール教育プログラム成人治療委員会III(NCEP ATP III)の目標値を達成するために非常に有用な治療となっている。エゼチミブが利用できるようになった当初は、フィブラート系薬剤との併用は勧められなかった。というのも、安全性・有効性に関する大規模な試験がなく、ファーマコキネティクス試験で、フィブラート系薬剤がエゼチミブの生物学的利用率を高め、その結果、血漿濃度が上昇することを証明するエビデンスが示された1ためである。さらに、フィブラート系薬剤は胆石症を増加させるとされ、イヌモデルではエゼチミブが胆汁中のコレステロール含量を増加させ、それにより理論的に胆石リスクを増加させることが明らかになった2。血中エゼチミブ濃度高値は、安全性の問題ではないと考えられている。用量設定試験では10mg以上の用量で他の有害作用は生じなかったためである。エゼチミブとフェノフィブラートの併用投与、エゼチミブ単独投与、フェノフィブラート単独投与を比較した初期の12週間プラセボ対照試験3で、各薬剤の単独投与に比し、エゼチミブとフェノフィブラートの併用投与は付加的な有効性を示したが、試験期間がわずか12週間であったため、長期安全性、とくに肝異常や胆嚢疾患について確認することができなかった。McKenneyらが実施したこの48週間試験は、12週間試験で示された併用投与の有効性が継続することを確認し、フィブラート系薬剤単独投与に比し、エゼチミブとフィブラート系薬剤の併用投与では、これに関連する重大な有害作用が認められないことを確立した。
ATP IIIの目標値遵守をさらに高めるため、スタチン系薬剤とエゼチミブの併用が広く普及しているが、フェノフィブラートとエゼチミブの併用によって臨床効果が得られる患者は多数存在する。肥満の蔓延は止まらないため、混合型高脂血症の有病率は世界中で著しい上昇をみせている。フェノフィブラート+スタチン系薬剤の安全性は、ゲムフィブロジル+スタチン系薬剤よりも優れているようである4。しかし、とくに75歳以上でしばしば生じる腎機能障害または肝機能障害の患者におけるスタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用については、懸念が寄せられている。さらに、エゼチミブとフェノフィブラートの併用は、スタチン不耐性のある患者にとって有効な治療になり得る。しかし、現時点では、心血管転帰に対する利益はまだ確認されていない。
より重要なのは、McKenneyらによる本研究が、エゼチミブとフェノフィブラートの併用の長期安全性を実証していることである。肝酵素上昇またはミオパシーの発現率は、フェノフィブラート単独投与に比し、併用投与による差がない。とくに混合型異脂肪血症患者で胆石症の有病率が高いことを考えれば、胆嚢切除術は両群であまり実施されていない。しかし、併用投与群でわずかに高いことから(1.2%対0.4%)、絶えず監視していなければならない。
本研究は、併用療法に関してFDAの規制認可を得るための中心的研究となっており、FDAは現在、混合型高脂血症患者に対するエゼチミブとフェノフィブラートの併用を認可している。混合型高脂血症とは、LDLコレステロールと非HDLコレステロールを適切に目標値にすることがもっとも困難な脂質異常の1つである。この試験の結果に基づくと、エゼチミブとフェノフィブラートの併用により、われわれは心血管疾患リスクが非常に高い患者をよりよく管理できるようになるであろう。
References
- Kosoglou T et al. (2005) Ezetimibe: a review of its metabolism, pharmacokinetics and drug interactions. Clin Pharmacokinet 44: 467–494 | Article | PubMed | ChemPort |
- Merck/Schering-Plough Pharmaceuticals (2002) Zetia® (ezetimibe) package insert. MSP Marketing Services, West Point, PA
- Farnier M et al. (2005) Efficacy and safety of the coadministration of ezetimibe with fenofibrate in patients with mixed hyperlipidaemia. Eur Heart J 26: 897–905 | Article | PubMed | ChemPort |
- Davidson MH (2006) Statin/fibrate combination in patients with metabolic syndrome or diabetes: evaluating the risks of pharmacokinetic drug interactions. Expert Opin Drug Saf 5: 145–156 | Article | PubMed | ChemPort |
