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Practice Point

脂質降下薬は左室機能障害の患者において心房細動の罹患率を減少させることができるか?

原論文

Hanna IR et al. (2006) Lipid-lowering drug use in associated with reduced prevalence of atrial fibrillation in patients with left ventricular systolic dysfunction. Heart Rhythm 3: 881-886

PRACTICE POINT(診療のポイント)

抗高脂血症療法は、高脂血症があり心室機能が低下している患者において心房細動のリスクを低下させる可能性があるが、心房細動は抗高脂血症療法の新たな適応症ではない。

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SYNOPSIS(概要)

BACKGROUND(背景)

動物実験およびヒト予備試験のデータから、スタチンやフィブラートのような脂質降下薬が、心房細動の管理においてある役割をもつ可能性が考えられる。これらの薬剤は炎症反応を調節し酸化ストレスを低減するが、いずれも心房細動の発生機序において重要と考えられる。心房細動の予防は、左室収縮機能障害を有する患者の合併症と死亡率を大幅に減少させると考えられる。

OBJECTIVES(目的)

左室収縮機能が低下した患者において、脂質降下薬が心房細動の罹患率に影響を及ぼすか否かを検討すること。

DESIGN(デザイン)

この観察研究では、データ解析の時点で米国106カ所の医療施設の患者が登録されていたNational Registry to Advance Heart Health(ADVANCENTⓇ、Cardiac Pacemakers Inc、ミネソタ州セントポール)の患者データを調査した。登録患者は全員、左室駆出率(LVEF)が40%以下であった。診療録および患者と医療従事者への面接により、ベースラインの人口統計学的データと臨床データを収集した。心房細動は心電図と律動をモニタリングした記録紙により証明するか、あるいは医師または患者の報告によった。併存疾患と薬剤の使用に関する情報も記録した。フィブリン酸誘導体、胆汁酸抑制剤、スタチン、エゼチミブ、ナイアシンを投与されている患者を、脂質降下療法中として分類した。

OUTCOME MEASURES(評価項目)

主要評価項目は心房細動があることとした。

RESULTS(結果)

2004年9月30日までに、ADVANCENTⓇには25,268例の患者が登録した。患者の大多数が白人で(82.5%)男性であり(71.5%)、コホートの平均年齢は66.4±13.2歳であった。虚血性心筋症、高血圧、高脂血症、現在または過去における心房細動が、それぞれ患者の72.1%、72.4%、71.2%、27.8%で認められた。左室駆出率の平均値は31%であった。薬剤の使用は、患者の81.7%がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を投与され、79.1%が遮断薬を、66.8%が脂質降下薬を使用していた。単変量解析によると、4種類の薬剤の使用はいずれも心房細動の罹患率の有意な減少と関連したが(すべての薬剤についてP<0.01)、脂質降下薬を服用していた患者においてその効果は最も顕著であった(心房細動の相対的減少は23.6%)。脂質降下薬と心房細動の罹患率の有意な減少の関連は、交絡する可能性のあるあらゆる変数を考慮に入れた多変量解析においても持続した(オッズ比0.69、95%CI 0.64~0.74)。

CONCLUSION(結論)

左室収縮機能障害のある患者において、脂質降下薬を服用している患者では薬物療法を受けていない患者より心房細動の罹患率が有意に少ない。ACE阻害薬、ARB、遮断薬による治療を受けている患者では、脂質降下薬ほど明白でない心房細動の減少が報告された。

KEYWORDS(キーワード)

心房細動、フィブラート、左室機能障害、脂質降下薬、スタチン

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COMMENTARY(解説)

Brian Olshansky

心房細動の管理は困難なものである。抗不整脈薬は、症状あるいは発作の発生率や死亡率を常に減少させるわけではなく、また心房細動には再発の可能性がある。ACE阻害薬、ARB、遮断薬は、左心室の機能が損なわれた患者における心房細動の発生率の低下と関連し、スタチンも術後の患者1-3およびその他の患者4-5において心房細動のリスクを低下させることが明らかとなっている。

左室駆出率が低下した患者を対象とした大規模多施設登録において、Hannaらは脂質降下薬、主にスタチンを処方された高脂血症患者において、心房細動の罹患率が低下したことを明らかにしている。著者らは、脂質降下薬の使用は、患者の脂質プロファイルとは無関係に心房細動の減少をもたらし、その効果はACE阻害薬、ARB、遮断薬によるより大きいと結論づけた。しかしこの広い一般化には疑問があり、精度が不完全である。臨床診療に変化をもたらすことはないであろう。

この後ろ向き解析は高脂血症患者のみに当てはまるものであり、これらの患者の大多数は脂質降下薬を処方されていた。こうした治療を受けていない少数の患者群は、心房細動に対する別の危険因子と、心房細動の別の機序さえも有する可能性がある。高脂血症がなく心室機能が正常の患者には、これらのデータは当てはまらない。注目すべきは、著者らが高脂血症とその治療法を定義しておらず、患者の脂質プロファイルを報告していない点である。心房細動のリスク低下に対する機序が一様であるという提案は、時期尚早であり想像上のものと思われる。スタチンの多面的な効果が心房細動のリスク低下の原因だとしても、スタチンがどれも同じ結果を生むわけではないという可能性が残る。さらに、Hannaらも示唆しているように、作用機序は炎症と酸化ストレスの軽減によるものである可能性がある。

この研究では、心房細動が脂質降下療法によって直接影響を受けることが証明されていない。心房細動は薬剤の使用と無関連であった可能性もある。実際に心房細動の既往のある患者は、それが登録前のことであっても、当時受けていた治療に関係なく心房細動とみなされた。この問題点はHannaらの論文の表3において明らかとなっており、それによると抗不整脈薬は4倍の心房細動のリスク増加をもたらし、高脂血症治療薬は心房細動の減少をもたらす。抗不整脈薬が実際に心房細動を引き起こしたかどうかは疑わしい。時間依存性共変量解析を利用することで、この点が明らかになるかもしれない。加えて、この研究の患者集団は、特に高脂血症患者としても、一般の心房細動患者としても典型的ではないと考えられる。さらに、心房細動の診断は心電図、患者の面接、診療録の調査に基づいたものであり、これは周知のとおり欠点のあるプロセスである。

脂質降下薬はすべての個人において心房細動の罹患率を低下させることはない一方、高脂血症があり心室機能が損なわれている患者において抗高脂血症療法は心房細動のリスクを低下させる可能性があり、脂質降下療法が高脂血症患者にとって適切であることをこれらのデータは示している。こうした治療法は、未知の別の利益を有する可能性がある。これらのデータは、高脂血症のない患者においてスタチンが心房細動のリスクを低下させることを示していないが、最近行われたARMYD-3試験3によると、心臓手術の7日前からアトルバスタチンによる治療を受けた患者では、プラセボを投与された患者と比べて術後の心房細動が有意に減少した。

Hannaらのデータは、スタチンが高脂血症の有無にかかわらずリスク患者における心房細動の罹患率を低下させ得るか否かを評価するためには、適切にデザインされた前向き無作為化対照試験が必要であることを支持している。

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References

  1. Amar D et al. (2005) Statin use is associated with a reduction in atrial fibrillation after noncardiac thoracic surgery independent of C-reactive protein. Chest 128: 3421–3427 | Article | PubMed | ChemPort |
  2. Marin F et al. (2006) Statins and postoperative risk of atrial fibrillation following coronary artery bypass grafting. Am J Cardiol 97: 55–60 | Article | PubMed | ChemPort |
  3. Patti G et al. (2006) Randomized trial of atorvastatin for reduction of postoperative atrial fibrillation in patients undergoing cardiac surgery. Results of the ARMYDA-3 (Atorvastatin for Reduction of MYocardial Dysrhythmia After cardiac surgery) Study. Circulation 114: 1455–1461 | Article | PubMed | ChemPort |
  4. Young-Xu Y et al. (2003) Usefulness of statin drugs in protecting against atrial fibrillation in patients with coronary artery disease. Am J Cardiol 92: 1379–1383 | Article | PubMed | ISI | ChemPort |
  5. Ozaydin M et al. (2006) Effect of atorvastatin on the recurrence rates of atrial fibrillation after electrical cardioversion. Am J Cardiol 97: 1490–1493 | Article | PubMed | ChemPort |
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